2016/08/25

鏡は嘘をつかない

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【鏡は嘘をつかない】

インドネシア人監督の映画を観るのは恐らく初めてではないかと思います。特に本作は女性監督です。インドネシアはイスラム社会でもあるので、女性監督ならではの苦悩の様なものもあったのではないかと想像します。

海上に高床式の住居を作って海と共に暮らすバジョ族の村が舞台です。漁に出たまま帰らない父を待ちながら、生存をまだ信じる娘は鏡での占いを繰り返し、母も心が整理できないまま日々を送ります。そんな家族を中心とした物語です。

まず、本筋から外れるかもしれませんが、ダイバー目線で見ると、水中映像が豊富なのが嬉しいです。ストーリーとは関係なのですが、見知った魚が出て来ると、

 「おっ、あれはトノサマダイか?」
 「あの、2匹の動き、怪しいんじゃないか」

などと、事更に声に出したくなってしまいました。

そうした海の中だけでなく、海洋民族としての日常も細かく描かれます。特に、近所の子供たちの明るい描き方は格別でした。

しかし、テーマは、帰らぬ父・夫を待つ、或いは諦めようとする二人の女性の心の揺らめきにあるのです。ここが、僕には少し歯がゆかったです。台詞は抑えめにして、繊細な映像で見せようとするアプローチは確かに沁みるのですが、その分、「もう少し説明してほしいなぁ」と云う思いが残りました。

本作では鏡が呪術的な象徴として扱われるのですが、バジョ族の人にとってその鏡がどの様な意味を持つのかを僕はしっかり掴むことが出来ませんでした。ここは大切なモチーフだと思うんだけどなぁ。また、作品中、母だけがずっと不自然な白塗りの化粧なのですが、それがバジョ族では明確な意味のある事なのか、或いは何らかの象徴的な表現なのかが分からず、僕はあやふやな想像力で補うしかありませんでした。

だからと云って、下手な解説を加えると折角の静かな世界の表現がぶち壊しになるので難しいのでしょうが、もう少し物語を揺さぶって観る者をストーリーに導く工夫が欲しかったです。

観る者が懸命に手を伸ばして何とか届くと感じさせる作品でしたが、あまり目にする事のないインドネシアの作品なので出来るだけ応援したいです。スクリーンで観る価値はあると思います。(#61-135)

ミノカサゴのペア

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【2016/08/06 富戸】ミノカサゴのお腹パンパンのメスの後にオスがピッタリ付いています。この日の夕方に産卵があるに違いありません。あぁ~、この日にサンセット・ダイビングがあればなぁ。

今週末は今シーズン最後のサンセットなんだけど、もう天気図の上に「台」マークが張り付いていて、海況がどうなのか訳が分からなくなって来ました。

2016/08/24

ストリート・オーケストラ

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【ストリート・オーケストラ】

リオ・オリンピックを記念してと云う訳ではありませんが、久しぶりに観るブラジル映画です。しかも、『青空エール』『シング・ストリート』に続いてまたもや音楽映画です。僕の心が夏の暑さで乾いているのかなぁ。

有名なオーケストラのオーディションに落ちたバイオリニストが食う為にとスラムの子供に音楽を教え始め、無気力な子供らと音楽を通じて語り合う内に・・と云う実話ベースの物語なのだそうです。

その粗筋だけで話の大凡は想像出来てしまいますが、この様な映画はそれでいいのだと思います。ラストでドーンと迫力ある音楽で感動させて貰えると期待して我々は映画館に足を運ぶのですから。

ところが、そのラストに辿りつくまでの話のメリハリが弱かったです。子供たちがなぜ音楽を音楽として美しいと感じるようになったのかのエピソードがもっと豊かにあってよい筈だし、すれっからしの子供らがどうしてこの教師を信じるようになったのかもしっかり描かれるべきです。一方、先生の方も、音楽を教える事によって自身の中で目覚めた物を物語の中で語って欲しかったです。

また、折角のオーケストラの物語なのですから、十分な長さで音楽をゆっくり聴かせる演出も必要です。

 「ブラジル映画なんだから『ストリート・サンバ』だったらもっとノリノリで楽しめただろうな」

などと考えるのは、日本人のステレオタイプに過ぎないのでしょうね。

シネマ ジャック&ベティ にて (#61-134)

サンゴの食害

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【2016/08/13 富戸】2~3mはあるこの大きなサンゴは僕が富戸に潜り始めた20年以上前からあり、モニュメントとも云える存在です。アナサンゴの仲間でしょうか。

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ところが、そのサンゴの一部が白くなっているのに気付きました。これまで注意をしていたなかったのですが、以前からあったのかな。

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そこでよく見ると、白くなった部分に2cm程の貝が6~7個集まっている所がありました。ゲゲッ、貝がサンゴを食っているのでしょうか。

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幾つかの貝を剥がして見ると、どれも同じ種に見えました。殻口の紫色の縁取りが目を惹きます。サンゴを食う貝としてはレイシダマシが知られているそうです が、これもその仲間でしょう(貝殻に付着物が多すぎて、同定出来ません)。オニヒトデを始めとして、サンゴの食害なんて南の海の出来事と思っていたのです が、こんな身近にもあったとは。これは、注意して要観察です。

2016/08/23

シング・ストリート

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【シング・ストリート】

上映館数は少ないながら、多くの映画ファンから熱い支持を集めている隠れたヒット作です。「音楽と若者」の映画を撮り続けて来たジョン・カーニー監督の自伝的作品です。

アイルランドの下層クラスの高校に転校して来た男の子が、可愛い女の子の気を惹く為にバンドを組み、知らず知らずの内に音楽の世界に引き込まれて自分の世界を広げて行くと云う物語です。

「高校生が主人公」「音楽満載」「恋物語」と次々と基礎点を重ねて、まずは合格点をクリアです。でも、それ以上どこか入り込めないものが僕にはありました。それは僕だけの個人的な事情によるものでしょう。

僕は、ロックと云う音楽に殆どはまる事無く10代・20代を過ごしました。それは何故と云う事を語ると長くなるのですが、「はみ出した振り」「破壊している振り」の音楽と当時の僕には思えて抵抗があったのでした。今にして思えば、頭でっかちの思いこみです。

ところが一方、本作は80年代のロックファンに向けたメッセージに溢れ、その時代に生きた人々に向けた音楽が次々流れるのです。デュラン・デュランと聞いたらある年代の人々には浮かぶ共通の光景や音があるでしょう。でも、僕はその名前は知っているし、曲も聞いた事があると云う程度に過ぎません。

「フィルコリンズが好きな男はもてない」と云う台詞を聞いた時、これもある世代の人々は「うんうん」と頷く共通の世界があるのではないでしょうか。僕には「そうなのか」と云う程度に過ぎませんでした。

特定の層の人々以外にも楽しめるように、この年代らしいサウンドを凝らした様々なオリジナル曲が流れるのですが、僕はやっぱり「この時代に乗り遅れていた男」と云うささやかな疎外感を脱する事が出来ませんでした。

そうして観ている内に、僕には本作が80年代の『ちいさな恋のメロディ』なのかなと思えて来ました。「荒れた家庭」「学校のいじめっ子」「頭の固い先生」「いじめっ子はいつか仲間になり」「先生への胸のすく仕返し」「二人で新たな世界へ」、そして「物語を紡ぐ音楽」と、道具立ては似通っています。

でも、やっぱり違うかな。ハッピーエンドの『メロディ』が、しかしながら確かに放っている切なさの様な物が本作には欠けていたように思います。ま、それも「乗り遅れた男」の思いに過ぎませんが。

シネマ ジャック&ベティ にて (♯61-133)

青空エール

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【青空エール】

我が家の妻からは「偏屈のくせに、なぜこんなのが好きなのか全く理解できない」と言われるジャンルの映画が久々に登場です。

劇場内には50人近いお客さんがいましたが、僕ともう一人の中年の男性を除いて恐らく全員が10代だったでしょう。しかも、その多くが女子高生と思われました。「若者に人気の映画を視察」と云うつもりではありません。「観たくて観に来た映画」です。

僕は、高校生が主役の青春映画と云うだけで基礎点60点が付き合格です。その上、音楽が関わると更に追加基礎点が加わります。

野球部の応援がしたくて高校のブラスバンド部に入り普門館(ブラバンの甲子園)を目指し始めた少女と野球で甲子園を目指そうとする少年が互いの淡い恋を交えて真っ直ぐに描かれます。

いやぁ、スケベな事で頭が一杯で毎日を鬱々と過ごしていた僕の高校時代とは1ミリも重なる所はありません。「物質と反物質」と云ってよい程の差があります。言わば「石田と反石田」で、互いに相容れない世界です。それだけに、様々に毒づきながらも「青春」なんて物に僕は昔から憧れていたんでしょうね。

さて、物語はこのポスターから見ても「さわやかな恋」を中心に回るのかと思いきや、どちらかと云うと「トランペッター成長物語」の面が重く、部員間の感情のもつれから、コンクールでの勝敗のドラマまでしっかり描かれています。高校でブラスバンド部だった人は恐らくそこだけで泣けてしまうのではないでしょうか。

ブラスバンド部をテーマにした映画ではアニメ作『響け ユーフォニアム』が今年公開されています。でも、あの作品では「楽器を吹く」と云う動きが表現出来ていなかったので白けたのですが、本作では生徒たちは恐らくみんな本当に楽器を吹いています(作中の音がその吹いた音だったかどうかはわかりませんが)。アンブシュア(マウスピースに当てる口の構え)と顔の筋肉の動きがリアルで、僕は自然に物語の中に入る事が出来ました。

土屋太鳳さんはちょっと高校一年生は見えなかったけど、あの真っ直ぐさはこれでよし。野球部の竹内涼真くんもジャニーズ顔やExile 顔でないさわやかさでこれでよし。志田未来さんはやっぱり上手い。また、『スウィング・ガール』ではサックスを吹く女子高生だった上野樹里さんが顧問の厳しい先生を演じていたのは感無量でした。

途中、恥ずかしくて座席の上で身をよじる場面がありながらも、一気に駆け抜けてやっぱりジ~~ンでした。僕は100回人生を繰り返してもこんな高校生活は一度も送れないでしょうけどね。

劇場内におられた僕以外のもう一人の中年男性と云うのは、恐らく高校生の娘さんと一緒に来たお父さんと思われました。はぁ、夏休みに娘さんとこんな映画を観に来る事が出来るとは、なんて幸せなお父さんなんでしょう。

MOVIX橋本 にて (#61-132)

ケンサキイカの卵

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【2016/08/12 富戸】毎年初夏から夏に掛けては砂地に産み付けられたケンサキイカの卵を探すのが楽しみです。昨年はかなり長期にわたって多くの卵塊を見つける事が出来た のですが、今年は全く眼にしません。「漸く見つけた!」と思ったら既にかなりボロボロで、卵内の発生はかなり進んでしまっていました。う~ん、これだと定 点観察の楽しみがない~。

2016/08/22

ゴーストバスターズ

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【ゴーストバスターズ】

言わずと知れた、あのSFコメディーの傑作が30年ぶりに復活です。今回は、『ゴーストバスターズ2』に繋がる続編ではなく、新作リブート版として制作されています。ただし、主役のバスターズ4人を全て女性に置き換えていると云うのがミソです。

実は、全米では数カ月前に予告編をウェブ上に公開しただけで、バッシングの嵐が吹き荒れたのだそうです。曰く、

 「ゴーストバスターズが女なんてあり得ない」
 「しかもブスな女ばかりだし」

などなど。特に黒人のレスリー・ジョーンズさんに対しては人種上の野卑な言葉が投げつけられたのだそうです。お陰で、かなり躓いた状態でのスタートになったのだとか。権利意識がしっかりしているのに、こうした野蛮性があるのもまたアメリカだなぁ。

作品を観てもいないで投げつけられる野次に対しては、映画ファンとしては黙っていられません。彼女たちを応援するつもりで劇場に乗りこみました。僕は勿論オリジナル版は観ています。

いやいや、十分に楽しめる作品でした。女性であればこその真っ直ぐなスピード、bitch 感あふれるにんまりする遣り取り、バカバカしい展開、その上での「友情・努力・勝利」の黄金のトライアングルは気持ち良かったです。4人のキャラクターの描き方もはっきりしていて面白かったです。

確かに、オリジナル作品の様な「衝撃」は希薄かも知れませんが、前作を知る人はそれと比較しながら、知らない人も何も問題なく乗って行けると思います。

それにしても、CG技術が格段に進んだ今回の作品と比べてもオリジナル版が全く色あせて見えないのは、やはりあの作品は凄かったんだなぁ。 

PS. 本作を観てから知ったのですが、オリジナル版のメイン・キャラクターであった、ビル・マーレイ、ダン・エイクロイド、シガニー・ウィーバーがチョイ役で出ています。それを探すのも楽しみですよ。僕は、ダン・エイクロイドは気が付きませんでした。

(#61-131)

キビレスズメダイ

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【2016/08/14 富戸】南方系の幼魚の出足が遅いと思われていた今年も8月中旬になって黒潮の接近に伴い漸くチラホラと見掛ける様になって来ました。さあ、これからと云う所で連発台風。悔しいですっ。(写真は、仮称キビレスズメダイ)

2016/08/21

二つの祖国で

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【二つの祖国で】

僕の父親は昭和元年生まれでしたが、終戦の頃には簡単な英語ならば話す事が出来たそうです。それには映画の力が大きかったと言ってました。昭和10年代、 世界から日本への締め付けがきつくなり始めると、映画も新作は殆ど日本に入らなくなり、配給会社は旧作のストックを繰り返し上映したのだそうです。それに よって古い洋画を観ることが出来、まだその頃は英語に触れる事が出来たんですって。が、やがてそれも叶わなくなってしまいます。

さて、太平洋戦争が始まるや、米国内の日系の人々はアメリカ国民であるにもかかわらず強制キャンプに収容されていた事は今や広く知られています。そうした 偏見を払拭するためにも日系の若者が軍隊に次々と志願し、そうした人々が第442連隊としてヨーロッパ戦線で勇猛果敢に戦った事も知られるようになりまし た。

一方、太平洋戦線に向かった日系米兵も居たのです。日本と戦う為の情報戦には日本語に堪能な者が必要と、日系人が多く集められMIS (Military Intelligence Service) と云う部局が組織されたのです。日本では、英語が「敵性語」などと呼ばれ始めた時代に、アメリカでは必死で日本語を勉強する人々が居たのです。そりゃあ、 日本は戦争に負ける訳です。

本作は、日本にルーツを持ちながらも米兵として故国と向き合わねばならなかった人々の証言を集めたドキュメンタリー作品です。

通訳などとして米軍に帯同して沖縄に侵攻したMISの部隊員の中には子供時代を沖縄で過ごした人も居て、そんな場合には親戚同士、ひどい場合には親子で敵味方として向かい合わねばならなかったのです。何と過酷な運命でしょう。

また、洞窟に沖縄の民間人が逃げ込んでいると思われる場合には、MISの人々が先頭に立って投降を呼びかけます。それに何の返答もない場合には洞窟がダイナマイトで爆破されたり、火炎放射器が向けられます。これも現場にいたら辛いでしょうね。

また、原爆投下後の広島に入った証言、ミズリー号での調印式に立ち会った証言、東京裁判に立ち会った証言、どれもが生々しく胸が塞がる思いでした。自分の良心に真摯であろうとすればするほど、「自分は一体何人なのか?」と云う思いに引き裂かれるでしょう。

敗戦後少し落ち着いた頃に一挙に公開され始めたハリウッド映画を観て、僕の父親は、

 「日本人が今日の食う物に事欠いていた戦時中に、アメリカ人はこんな映画を撮っていたのか。こんな国と戦争しちゃいかん」

と度肝を抜かれたのだそうです。勇ましい声に煽られて引き返すことの出来ない場所に行く前に、文化・国籍・宗教・民族の違いの理解に映画が少しでも役立ってくれればと願わずにはいられません。

アミューあつぎ映画.comシネマ にて (#61-130)

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