2017/11/25

初冬の陽射し

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【初冬の陽射し】 2017/11/25  富戸

快晴、べた凪、水温:19℃、透明度:17m

 やっぱり11月の富戸はこれでなくっちゃなぁ。超浅場でものんびり出来る穏やかな海です。そして、この季節になると水面に差し込む光が愈々輝きを増して来ます。冬の北風が吹いて海の青さが深まると、ここを動けなくなってしまいます。そして、どうしてもこの光景を写し取る事は出来ないのに、無駄にシャッターを切り続けるのでした。

人生はシネマティック

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【人生はシネマティック】

 映画好きの人は誰もがそうだと思うのですが、十代の頃には「映画監督になりたいなぁ」と僕もボンヤリ考えていました。しかし、映画撮影を題材とした映画を観ていると、映画監督は膨大な人間関係を差配する能力がなくては勤まらないらしいぞと分かって来て、「ダメだ。僕に最も欠けている能力だ」とガックリ肩を落としたのでした。でも、何か映画に係わる仕事をと考えた時、脚本家ならば出来るかも知れないと思ったのでした。一人で部屋に籠って原稿用紙と格闘すればよいのだから、あまり人と会う必要もなく、少なくともその部分だけは自分一人の力を発揮できると考えました。

 そこで、「月間 シナリオ」を買って来て「そうか、そうか。シナリオとはこんな風に書くのか」と納得した気になって、自分も机に原稿用紙を広げて「さぁ!」と思った時、愕然としました。「僕には書きたい物語がない」と気付いたのです。撮りたい映画もないのです。或いは、もう誰かが撮った映画しか思いつかないのでした。「僕は、一体何をしたかったのだろう?」一番肝心なところで躓いてしまったのでした。

 何を書いたらよいのかはどの脚本家も悩む事であり、また、脚本家は部屋に籠っているだけでは務まらない事を知るのはもう少し後になってからの事でした。

 でも、今回この映画を観ていて、あの十代の頃の気恥ずかしい苦さをまざまざと思い出しました。

 第二次世界大戦中、イギリス国民の戦意高揚の為に、ダンケルクの英雄譚(ドイツ軍に追い詰められたイギリス兵を救出するために、本国から多数の民間人が船を出して大陸に向かったお話)を映画化する依頼を受けた女性脚本家のお話です。今年大ヒットを記録した映画『ダンケルク』が裏側からこんな風に描かれると云うのがまず面白いですね。

 映画を撮る映画と云うと、監督の思いが先走って小難しくなったり、ぶっ飛んだりしがちですが、本作はイギリスらしいユーモアとしゃれを忘れる事無くお話が進むのが素敵です。戦時中ですからロンドン空襲の辛い場面もあるのですが、それでも明るさを失うまいとする本作の姿勢が我々の心を暖め続けます。

 また、映画ファンならば是非見たい当時の撮影風景もふんだんにあり、「そうかそうか、こんな風に撮っていたのかぁ」と思わせられる場面も満載でした。映画好きの人の喜ばせ方が分かっているのは監督や脚本家の方も映画好きであり、尚且つクールな眼を持っているからでしょう。

 監督になりたいとか脚本を書きたいとは今ではもう思いませんが、「一本の映画の撮り始めから終わりまでを現場に関わって見てみたいなぁ」としみじみ思いました。

武蔵野館 にて (#62-229)

2017/11/24

卵を守るセボシウミタケハゼ

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【卵を守るセボシウミタケハゼ】 2017/11/24  富戸

快晴、凪、水温:19℃、透明度:13m

 昨日から一転、ピカピカの青空、穏やかな海になりました。それだけでアゲアゲです。あと、白っぽい濁りが取れて呉れたらなぁ~。

 セボシウミタケハゼは秋が産卵期で、富戸ではたいていオオパンカイメンに産み付けています。ところが、ジュズエダカリナに産卵している個体を今日初めて見ました。

 が、いずれにしてもオッサン・ダイバーの眼には透明微小な卵の識別は厳しい~っ!

IT

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【IT】

 アメリカでは大ヒットと評判のホラー映画です。この不穏な雰囲気のポスター、そして恐ろしげな予告編映像、スティーブン・キング原作という事からも期待が高まります。

 思わぬ所で不意に現れるピエロの姿を見た子供が次々と姿を消して行くという謎を背景に、いじめられっ子の負け犬の子供らがその恐怖と立ち向かう姿を描く物語です。

 ピエロの造形もよく出来ているし、いじめられっ子の友情譚も感情移入し易く、メリハリのある展開で、ヒットの理由もよく分かります。でも、観ている間、ずっとモヤモヤした思いが晴れませんでした。それには幾つかの理由がありました。

 まず、このピエロの正体が見えて来ないのです。過去に何らかの事件があってその怨念がピエロに姿を変えたとか、昔の伝説が蘇ったとか何らかの物語があれば怖さに芯が通った様に思うのですが、そこがフワフワしたままでした。

 いや、逆に、ピエロの正体など必要ないと云う考えもあります。「理由も何もなく、ただただ子供をさらって行く」と云う設定でも怖さが際立ちます。しかし、それならば「正体の無さ」をもっと先鋭に押し出して来るべきでしょう。

 この様に「ピエロの正体」が気になるのは、「このピエロは単にピエロではなく、別の事を象徴しているんですよ」と云う囁きが作品を通じてずっと聞こえて来るのです。それは単純に考えれば、「子供から大人の世界への入り口の象徴」と言えるかもしれません。いや、もっと別の考えもできるでしょう。でも、その囁きが非常にうるさいのです。単純なホラーが妙に説明っぽくなってしまいます。象徴などしなくていいから、ただ怖がらせて欲しいのです。

 更に、もう一つ気になること。それは本作の字幕では"IT"(つまり、このピエロ)が「それ」と訳されている事です。そんなの中1で習う英語で、それで間違いはないのでしょうが、僕にはどこかずれた訳に響きました。単語の微妙なニュアンスを把握できるほど英語に詳しくないのですが、「それ」と云う余りに即物的過ぎる訳ではピエロの不気味さは伝わらない様に感じました。

 あとで知ったのですが、今回の"IT"は前篇であり、数年後に後篇の公開も予定されているのだとか。う~ん、やっぱり気になって観てしまうんだろうなぁ。

TOHOシネマズ 海老名 にて (#62-228)

浜の湯

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【浜の湯】 2017/11/23  富戸

 11月の風物詩、ヨコバマの浜の湯が愈々オープンしました。これで、Exit後の冷えた体を直ぐに暖める事ができます。が、オープン初日のこの日はあいにくのどんより曇り空の上に、どどどんと景気のよい波です。温泉につかっても、心は冷えて行く一日でした。

2017/11/23

サクラダイ

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【サクラダイ】 2017/11/23  富戸

雨、海況:波あり(聞いてないよぉ~)、水温:19℃(ジワリ低下)、透明度:8m

 先々週にサクラダイの産卵を富戸で初めて観てから、ダイビング・テーマの中心に急浮上して来ました。産卵がどの様に始まって、どの様に終わるのかまでを確かめたいのですが、30m近い水深だし、自分の歳を考えると十分に無減圧潜水時間を残して浮上したいので、観察時間はせいぜい10分程度です。

 彼らは時計を持ってはいないので、毎日同じ時刻通りに動いている訳ではなさそうです。「このくらいの時刻には」と予想して行っても全く何の動きもない事もしばしばです。しかも、そろそろ産卵期も終盤に入っています。

 う~ん、まだまだ全貌が見えて来ません。空振り潜水が続きます。今年中に何とか全体像を把握したいのですが。

2017/11/22

まともな男

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【まともな男】

 これはキツい映画でしたぁ~。

 キツいと云っても残酷シーン・暴力シーンがある訳ではなく、日常生活の僕らの立ち位置から地面が少しずつ削り落とされて行って、気が付いたら靴一足分の場所を残して周りは全て断崖絶壁、身動きが取れなくなっているような、そんなキツさでした。

 「『そんな細かい事に拘らなくっても』と云いながら、実は、細やかな心遣いを忘れているだけの夫」、「『もう少し時間を掛けて考えてみよう』と云って、問題を先延ばしにしているだけの優柔不断な父」、そんな男性には特に身に詰まされるお話が続きます。

 一人娘、妻、に加えて上司の娘と共にスキーリゾートに出かけた男が遭遇する事件をきっかけに、グズグズした判断の結果、少しずつ不幸の穴に引きずり込まれて行く物語です。

 昨年見た『フレンチアルプスで起きたこと』では、迫り来る雪崩を見て、家族を放ったらかして自分一人だけで逃げた男の情けない姿が描かれていました。本作もやはり夫・父の悲哀を描いてはいるのですが、こちらの方が僕にはよりリアルであり、突き付けて来る刃が鋭く感じました。彼の下す判断の一つ一つは決して正しくはないのかも知れないけれど、「でも、僕だってそうするかも知れない」と思え、自分の心にピッタリ貼りついてしまうのです。それを繰り返す内に、観る者が彼と共にあるべき位置から少しずつ少しずつズレて行ってしまうのです。

 その「緩慢なズレ」が、僕にはとても重くのしかかって来ると共に、「中年男のズルさ・優柔不断さなんて世界共通なんだな」と妙に安心もしてしまうのでした。いやいや、そうして安心しているからダメなんだな。 

ケイズシネマ にて (#62-227)

クロイトハゼ

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【クロイトハゼ】 2017/11/18  富戸

 クロイトハゼは富戸で見られるハゼの中では定点観察・個体識別・雌雄識別が可能な稀な種です。

 いつもペアで行動している2匹は、目許から胸鰭基部に至る黄色ラインの凸凹パターンで個体識別が可能です。また、メスは卵でお腹が膨れて来る事で見分ける事が出来ます。

 前週には、お腹の大きなメスがオスと共に小石を積んでマウンドを築いていたのですが、この日には一匹だけになっていました。お腹はぺったんこになっていますが、黄色ラインのパターンからこれはメスである事が分かります。つまり、この1週間の間に産卵したのです。一方オスは姿を消している事から、マウンドの下で卵を守っていると思われます。なお、この間にマウンドはこれまでの最高高度に達しました。

 クロイトハゼの卵を守るのはオスであると言う事が、こうして観察を通じて知る事が出来るのです。

2017/11/21

ラモツォの亡命ノート

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【ラモツォの亡命ノート】

 もう四半世紀以上前、我が家の妻と二人でチベットを一週間旅行したことがありました。当時は外国人のチベット自由旅行は許されておらず、地元のチベット人の方にガイドをお願いしての行動でした。

 ラサ郊外のある尼寺を訪れた時の事です。そのお寺の庫裡の様な建物から出て来た尼さんが手招きして我々を中に入れて下さいました。内部は薄暗いのですが、柱はやや煤けながら黒光りしていました。そして、チベット特有のお香の香りが室内を満たしていました。すると、その部屋の隅に腰かけていた年老いた一人の尼さんがバター茶を進めて下さったのです。少し驚きながらも有難く頂きました。我々日本人にはちょっと強すぎる味わいなのですが、地元の方々はこれを栄養源ともしているのだろうからと少しずつすすりながら頂いていると、その尼さんが何かをぼつぼつとお話なさいました。丁度その時にはガイドさんが傍に居なかったので何を仰っているのか分からなかったのですが、その語り口と表情が強く印象に残りました。

 お寺の中でもかなり位の高い僧と思われたその方は、当時既に70歳を超えておられたろうと思います。と云う事は、中国のチベット侵攻や文革をもくぐり抜けて来た筈です。チベット人として、そして宗教者として耐え難い屈辱に耐えねばならぬ事もあったに違いありません。しかし、この時はそんな事は微塵も感じられない穏やかなお人柄でした。そんな方がこの時、遠くから来た日本人にお茶を振舞って下さっていたのです。その姿は樹齢数千年の古木の様に、その地に根を張り、動じる事のない穏やかな姿に見えました。「強い(つよい)」と云うより「勁い(つよい)」と云う言葉が相応しいしなやかさでもありました。

 この後、我が家の妻が、

 「あんな人には、もう何をしても絶対に敵わないだろうなぁ」

と呟き、僕も深く頷きました。

 さて、「この人には絶対に敵わないな」と思える表情にスクリーンの中で久々に出会い、あの老僧を思い出しました。本作は、チベットからインド、そしてアメリカへと安住の地を求めて旅を続けながら、子供や義父母らを腕一つで守るチベット人女性・ラモツォの6年余りを追ったドキュメンタリーです。夫は、北京オリンピックを批判する映画を製作したとの咎で逮捕・拘留されたままです。

 ラモツォは、文字の読み書きは出来ないのですが、日々の思いをビデオ日記として残しています。そこで語られる言葉が非常に豊かなのです。難民や亡命と云う言葉から我々が抱く単純な像とは少し異なる文学性を有しています。少し自分を客体化する様な視線には余裕をすら感じるのです。そして、「夫は間違った事はしていない。私は家族を守る」と云う意思が溢れています。

 僕が観た日には、ラモツォさんご自身が登壇してのトーク・ショーがありました。マイクを持って話すラモツォさんの視線は映画通り「勁く」、とても魅力的でした。そして、へなちょこな僕にはとても敵わないと改めて思わされました。

 日本と云う国は何か出来ないのでしょうか。 

ぽれぽれ東中野 にて (#62-226)

クロイトハゼのマウンド

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【クロイトハゼのマウンド】 2017/11/18 富戸

 毎年秋にはクロイトハゼの定点観察が定例となっているのですが、今年は海が荒れて潜れない週末が多かったので、観察が度々途絶えてしまいます。

 「毎週観察できないと、ペアの行動が追えないんだよぉ~」

と、今年の連続観察は諦めてしまいましたが、それでも、注目している2ペアの記録だけは続けています。

 そうしたところ、Point10 のマウンドが、長い観測史上最高の標高35cmに達しました(毎週、標高を測っています)。美しいコニーデ型のマウンドが高くなるのは、その下でオスが卵を守っている証拠です。事実、先週末までペアでいたクロイトがこの日はメスだけがせっせと石を積んでいました。恐らく今年2度目か3度目の産卵です。

 まだまだ水温は高いからもっと産めよ殖やせよ~。

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